フンボルトペンギン用保定器具の開発による性判別の試み

動物園水族館雑誌Vol.33No.4 1991

展示課    山崎幸雄,大和 淳,山田 篤,西脇功一

【要旨】
フンボルトペンギン Spheniscus humboldti は、いわゆる雌雄同形で、外見からの性判別が困難な鳥種の一つである。このため、本種の性判別のために諸種の方法が開発、検討されてきた。フンボルトペンギンの飼育経験者は、ペアを形成した個体についてその性行動から性別をある程度推測することができる。また、嘴や体部の大きさの差を統計的に検討し、性判別を試みることも行われているが、これらはいずれも決定的なものではない。針状内視鏡や染色体検査、糞尿中ステロイドホルモン分析による性判別法は一部の種類で応用されているが、特殊な器具や施設を必要とするため、一般の飼育現場では実用的ではない。最も簡便な方法のひとつであるペンギンの総排泄腔観察による性判別法は、 S1aden,Samour et al.により報告された。この方法は,総排泄腔内にある卵管開口部や、乳頭状突起を、簡易な器具を用いて直接観察し性判別を試みるものであり、国内でもすでに一部園館で応用されている。しかし、本技術も、観察時にペンギンが暴れるため麻酔を必要とする場合があるという欠点がある。

そこで、今回我々は、ペンギンを無麻酔下で安全に保定し、総排泄腔観察による性判別ができるように保定器具を開発した。以下に、この保定器具と総排泄腔観察の概要を報告し、本邦におけるフンボルトペンギンの飼育下繁殖向上のための参考に供したい。
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