座礁したオガワコマッコウの保護例

2007年 第33回海獣技術者研究会

○ 村井扶美佳1),加藤治彦1),鶴巻博之1),松本輝代1),新田誠1),岩尾一1)
  小林稔1),山際紀子1),長谷川泉1),榊原陽子1),窪寺恒己2)
(1)新潟市水族館マリンピア日本海,2)国立科学博物館)

2007年6月19日,新潟市北区松浜阿賀野川河口(37°57′N,139°8′E)にコマッコウ科と推定される雌成獣が生存漂着したため,新潟市水族館マリンピア日本海に搬入した.通報から搬入までに要した時間は約3時間であった.プール収容前に,外部形態の計測を行った結果,背鰭が背の中央付近に位置し背鰭高が体長の5%を占めることからオガワコマッコウ Kogia simus と同定した.2007年10月1日時点での(財)日本鯨類研究所ストランディングデータベースによると,国内での保護例は3例目である.

収容施設は屋内展示用プール (14.0×7.5×H3.0m)を使用した.飼育水温は22.1℃±0.3℃,飼育水残留塩素濃度は0.2ppm±0.1ppmであった(2007/6/19-2007/6/21).収容直後,自力遊泳し暗赤褐色の排泄物を出した.また体を倒立し頭部を水底に押し付け,潜行しようとする行動が繰り返し見られた.搬入から一時間半後には,この行動の出現頻度は低下し,水面に浮遊した状態で止まった.搬入翌日も水面浮遊状態を維持していた.補液等の治療を行うため陸上取り上げを試みたが,水中で保定する際,激しく暴れたため中止した.この際暗赤褐色の排泄物を出し,プールの視界は完全に得られなくなった.搬入3日目も水面浮遊状態が続いた.スルメイカを口元に差し出し,給餌を試みたが反応は無く,昼から嘔吐や吐血が続いた.夕方になり突然暴れ,高速遊泳や頭部を壁面に強打するなど異常行動を起こした.直後に取り上げたが,呼吸は確認されず死亡した.死亡時の体長と体重は,216㎝,147㎏であった.剖検の結果,右肺出血,心内膜内出血,解離性動脈瘤が確認され,直接の死因は出血による窒息および循環機能不全と考えられた.胃内容物から少なくとも4種の頭足綱の下顎板を同定した.

     

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