新潟市近郊の陸水環境を模した「にいがたフィールド」とその活用について

2018年 第63回水族館技術者研究会

展示課 平山結,田村広野 管理課 石川訓子, 大和淳

 1990年に誕生した新潟市水族館マリンピア日本海は, 老朽化及び耐震対策, バリアフリー化, 新たな魅力の付加を目的に, 2013年にリニューアル工事を実施し, 屋外に「にいがたフィールド」を設置した. その概要と活用を紹介する. 「にいがたフィールド」はある種のビオトープで, 築山・里域の水辺環境・芝生広場から構成される敷地面積3400㎡のゾーンである. 里域の水辺環境として, 地面を掘削して遮水シートを埋設し, 小川・ため池・たんぼ・わき水・砂丘湖の5つの環境を模した. 総水量は100㎥で最大水深は90㎝である. 各水域は小川でつながり, 水道水を中和した飼育水と井戸水を供給し, ポンプ循環を施している. 水温は, 井戸水の供給点である湧水では年間を通して14℃前後と一定であり, その他の場所では気温の影響を受け変動している. 「にいがたフィールド」は新潟市近郊の陸水環境を模し, 水生植物ではアサザやトチカガミなど, 魚類ではシナイモツゴやホトケドジョウ, トミヨ属淡水型など, レッドリスト選定種を含めた在来種を半自然的な環境で成育させている. これらの種の一部は自然に繁殖, 定着し, 生息域外保全にも資されている. また, 学習機会を提供するため, 3月から11月までの月1回, 各エリアを職員が解説しながら案内するガイドツアーを実施している. ツアーは10名につき1名のスタッフが対応し, 多くの質問を受けるなど参加者の反応はよい. ユニークな体験として, 同一の20名を対象に6月から11月までの期間に, 田植え・稲刈り・脱穀・わら細工の一連の流れを体験してもらい, 「米どころ」新潟の水域文化の一部である農業や伝統について伝えている. 普段できない体験ができてよかったなどの感想が多く, 参加者の満足度は高い. 「にいがたフィールド」には導入生物以外の昆虫や鳥類なども来訪し, 一部は定着するなど多様化も増している. 今後も, 健全な展示環境を維持し, 希少生物の保全及び教育普及を推進していきたい.

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