2021年 JAZA 第47回海獣技術者研究会
展示課 安藤みはる,松本輝代,渡邉拓也,石田茉帆,古屋怜菜,伊敷夏海,鈴木幸誠,石川訓子
マリンピア日本海では,カマイルカLagenorhynchus obliquidensの3例の繁殖個体(出生年月日:2019年7月29日,2020年8月4日,2021年7月13日)に,それぞれプール間移動トレーニングを実施した.施設はA,B,C,D(順に水量360㎥,25㎥,125㎥,800㎥)の4つのプールが1列に並び,各プール間はゲートのついた水路でつながっている.母獣は3例とも異なり,出産はAで母獣単独で行った.1例目は生後26日目,2例目は生後15日目に親子でBまでの移動を試みたが,母獣がゲートを通過しても子獣がゲート前で引き返したため移動はさせられなかった.そのため2例とも子獣が生後半年以上経過した頃に網を用いてプールを狭め,ダイバーが補助しながらゲートの通過を繰り返し,Cまでの移動が可能となった.しかし,網を用いた手法は子獣が網や壁面に突進するなど危険な場面もみられた.そこで3例目は親子がほぼ離れずに遊泳している生後6日目に移動を試みた.子獣の単独遊泳が安定せず,壁面衝突の懸念があったため,狭いBではなくCまでの移動を目標とした.母獣に移動サインをだすと,子獣を連れてCまで移動した.母獣に対して定位は求めず,子獣との遊泳を止めないよう投餌で強化を行ったところ,3往復目にはスムーズな移動が行えるようになった.その後,毎日1セッションAからCもしくはBへの移動トレーニングを行っている.子獣がゲート前で引き返す行動が数回あったが,すぐに母獣が引き返して子獣を誘導し,ともにゲートを通過した.2021年9月現在,子獣がゲート前で引き返す行動はなく,BやCで母獣がトレーナーに定位中も子獣は安定した単独遊泳を行っている.トレーニング時以外にゲート開放の時間を設けたところ,スムーズな移動が確認された.本事例は移動時の事故など懸念は残るものの,子獣の安全な移動トレーニング方法の一つとして有効であると考える.