2024年 JAZA 第69回水族館技術者研究会
田村広野,清水哉多(新潟市水族館)
千葉悟(水産研究・教育機構)
渋川浩一(ふじのくに地球環境史ミュージアム)
八柳哲(北海道大学農学院)
荒木仁志(北海道大学大学院農学研究院)
富森祐輔(新潟県長岡地域振興局)
鈴木悠理(国土交通省木津川上流河川事務所)
コシノハゼGymnogobius nakamuraeはハゼ科ウキゴリ属の淡水魚で新潟県と山形県に分布し,ごく少数の溜池などで生息が確認されている.新潟市水族館は,2019年から環境省より国内希少野生動植物種捕獲等の許可を得て,新潟県内での生息調査,飼育による生態調査,教育普及などの保全活動を実施している.2021年度に環境省の生物多様性保全推進支援事業の国内希少野生動植物種生息域外保全に採択され,3年間,事業名「新潟県産コシノハゼ生息域外保全」として実施した.①生息調査:2019年に新潟県下越地方で3箇所,2021年に同地方で1箇所,2023年に中越地方で2箇所,新たに生息を確認した.2022年には環境DNA調査を実施した.②飼育による生態調査:2019年,昼間は底砂に潜り込む個体が多く夜間に遊泳する個体が増えるなど,夜間に活発になる生態を明らかにした.2021年10月に野生から導入した30個体を複数の水槽を用いて飼育し,屋外,屋内,水槽の大小,収容数,性比など繁殖に適した環境を調査した.屋内の窓際に設置したアクリル製90 ㎝水槽(水量150 L,中和水道水かけ流し,底砂有り,自然日長)で6個体(雌雄不明)を飼育していた.2022年5月1日に婚姻色(本種は雌のみに発現)を発現した雌1個体と雄1個体を,屋内のアクリル製60 cm水槽(水量56 L,中和水道水かけ流し,水温15.7 ℃,無底砂,LED照明)に収容したところ,5月7日に産卵があった(水温17.5 ℃).卵は基部に付着糸叢のある長茄子型の沈性付着卵で,長径4.56 ± 0.23 mm,短径1.50 ± 0.05 mm(n = 7),卵数85粒,うち基質に付着し垂下していたのは6粒であった.雄親魚によるファンニングなど卵保護行動があったが,卵は発生しなかった.③教育普及:通年展示をはじめ,様々なメディアを活用するとともに,2023年度には研究者を招き講演会を開催した.④まとめ:今後も本種の保全活動を継続し,産卵例を基に飼育環境を整え繁殖を成功させたい.