ウミガラス雛へのサプリメント投与

2024年 JAZA 第50回海獣技術者研究会

展示課 平山結,前田綾子,榊原陽子,川口顕良多,牧田楓菜,岩尾一

 新潟市水族館マリンピア日本海では,2021年3月にウミガラスUria aalgeを展示し,2023年6月に人工育雛,2024年5月に自然育雛の機会があり,雛へのサプリメント投与を実施した.2023年は抱卵中に起きた卵の水中落下により人工孵化に移行,産卵35日目で孵化し,人工育雛を実施した.雛の餌はワカサギ,マイワシ,イカナゴを1日2-4回手差しと置き餌で与えた.2日齢よりビタミン剤(Mazuri® 5TLC)をビタミンE 50-100 IU/kg(餌重量)となるように毎日与え,21日齢よりカルシウム不足予防のため,炭酸カルシウムを1日あたり62.5mg与えた.17-19日齢で与えたイカナゴで消化不良があった以外は順調に成育し,39日齢で展示を開始した.2024年も前年と同個体が産卵し,33日目で孵化した.雛の孵化後,親の餌をワカサギとオキアミのみに変更し,7日齢からキビナゴ,31日齢からイカナゴを追加した.ビタミン剤は2日齢より投与し,親が雛に1/2錠を詰めた餌を与えた場合は,その後数日間は未投与,親が与えなかった場合は,1日1回70-80尾(200-240g)に1/8錠ずつを詰めて与えた.70日齢で自力摂餌を確認し,自力摂餌が安定した86日齢からは1/3錠を1回目の全給餌量に詰めた.3-41日齢まで,雛が淡水魚を多く摂餌している場合,高度不飽和脂肪酸を補うため養殖魚用配合飼料(おとひめEP3)を,1日1回70-130尾(200-400g)に2-3粒ずつを詰めて与えた.雛は26日齢で巣立った.人工育雛,自然育雛ともに雛はその後も順調に成育している.ビタミン剤について,自然育雛時の摂餌量を人工育雛時と同量と仮定した場合,ビタミンE投与量はほぼ目標値となった.人工育雛時の炭酸カルシウム投与量は十分ではなく,投与量の4倍が適切であった.自然育雛時に投与した養殖魚用配合飼料については,淡水魚は体内で高度不飽和脂肪酸を合成できるため,餌のみで十分であり,投与は必要なかった.


     
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