アカテガニの飼育下繁殖について
2014年 関東・東北ブロック水族館飼育技術者研究会
展示課 原田 彩知子
アカテガニ Chiromantes haematocheir は十脚目ベンケイガニ科アカテガニ属に分類される陸生のカニで、岩手県以南、南西諸島、台湾、中国北部に分布する。本種のゾエア幼生から稚ガニにいたる飼育知見は少ない。飼育下繁殖による育成記録を報告する。
親個体は2011年10月24日に佐渡市沢根海岸で採集した。2014年7月17日にアクリル水槽 (W400 mm×D250 mm×H200 mm) に、オス1個体とメス2個体を収容し、展示した。室温25 ℃、餌はアカムシ、栄養強化した冷凍ブラインシュリンプ、エビカニ用配合飼料、肉食魚用配合飼料を週5回の頻度で与えた。同年7月5日に抱卵を確認し、7月22日に海水をはったポリプロピレン製飼育容器 (W385 mm×D208 mm×H290 mm) へ移動した。7月23日に放出されたゾエア幼生を発見し、太鼓型アクリル水槽 (φ333 mm×D100 mm) へ収容した。止水下で弱く通気を行った。毎日1/3換水を行い、強化シオミズツボワムシと冷凍ナンノを与えた。メガロパ期で海から河口へ遡上することから、17日目にメガロパ幼生を確認してから、徐々に淡水の分量を増やした。餌は上記に加えて栄養強化したアルテミアノープリウス幼生も与えた。また、24日目からメガロパ幼生10個体をガラス製容器 (φ290 mm×H150 mm) へ移動し、餌は栄養強化した冷凍コペポーダに変更した。稚ガニは27日目から確認され、3個体は脱皮を追跡するため、300 mLデリカップに1個体ずつ収容した。稚ガニには強化冷凍コペポーダ・ブラインシュリンプ、粉砕したプレコ用配合飼料を与えた。毎日ほぼ全換水を行い、淡水は4日ごとに100 mLずつ増量し、69日目の現在、海水・淡水比は1:4である。
放仔後0日齢幼生は頭胸甲長0.37 ± 0.05 mm (mean ± SD、n = 5)、脱皮は水温26.9 ~ 27.2 ℃下において約4日間隔で観察され、8日齢0.66 ± 0.04 mm (n = 5)、17日齢メガロパ幼生は甲幅1.00 ± 0.08 mm (n = 5)、甲長1.01 ± 0.12 mm (n = 5) であった。最初に確認した稚ガニは、26.2 ~ 27.2 ℃下において27日齢で甲幅1.04 mm、67日齢で 4.10 mmに成長した。